あわや衝突、ニアミスしていた小惑星

接近も気づかず 都市消滅の危険

◆密かに過ぎていた衝突の危機

 今年6月、ある小惑星が地球のごく近くまで接近しながら、
天文学者たちが事前の検知に失敗するという出来事があった。

「2020 LD」と名付けられたこの小惑星は6月5日、
月の軌道の内側という至近距離まで地球に接近している。

最初に存在が知られたのは、通過から2日後のことであった。

小惑星の大きさは直径122メートルほどだ。
月までの距離の80%にまで接近した後、幸運にも地球に落下することなく通過している。

米フォーブス誌に寄稿するサイエンス・ジャーナリストのジェイミー・カーター氏は、
この規模の惑星がこれほど間近まで接近したのは、2011年以来であった

◆衝突までのシナリオは?

 では、小惑星の落下は、どのようなメカニズムで発生し得るのだろうか。
広大な宇宙空間で地球と小惑星の軌道が偶然に交差するというよりは、
小惑星が地球の引力によって引き寄せられてしまうというのが現実的なシナリオだ。

フォーブス誌は、キーホール(鍵穴)という用語でこの現象を説明している。
地球の重力場のなかにキーホールと呼ばれる領域が存在し、
ここに小惑星が突入すると、その軌道は地球側に大きく引き寄せられる。

 英エクスプレス紙(6月17日)は「シロナガスクジラ5頭分」と例え、
2020 LDのサイズの大きさを強調する。
同紙は地球への接近について「専門家たちは6月7日まで発見できなかった」

2013年ロシア

衝撃波で壁と屋根の一部が破壊された亜鉛工場。

2013年チェリャビンスク州の
隕石落下(ロシア内)

 

外から来た衝撃波によって窓ガラスが割れ、破片が建物の内部に入り込んだ。画像の建物はチェリャビンスクの映画館。

◆2019年にも来ていた「都市壊滅小惑星」

 2019年7月、ある小惑星が地球をフライバイ(接近通過)し、
のちに「2019 OK」と命名された。

小惑星のサイズについてNASAジェットエンジン推進研究所は、
直径60〜130メートルほどだという観測結果を公表している。

地球への近接度では2020 LDを上回り、月までの距離のおよそ20%にまで近接していた。

仮に地球の引力に引き寄せられて地上に落下していたならば、
「その爆風は直径50マイル(80キロ)ほどの範囲に局所的な壊滅状態をもたらしていた可能性がある」

2019 OKのケースでも発見は遅れ、
サイズと軌道が公にされたのは最接近のわずか数時間前のことであった。
このように地球に非常に接近する小惑星は、
非公式に「シティーキラー・アステロイド(都市破壊小惑星)」と呼ばれ、
深刻な被害が懸念されている。

このような事態を防ぐため、
潜在的に危険な小惑星の把握が進められている。

宇宙関連のニュースを伝える『Space.com』によると、
NASAでは地球付近をフライバイする直径1キロ以上の小惑星について、
その90%以上をすでに発見している。

さらに今後は宇宙空間に赤外線カメラを打ち上げ、
熱によって小惑星の接近を検知するプロジェクトも計画されている。

●軌道を変える「キネティック・インパクター」

宇宙船またはロケットを目的の天体に衝突させてコースを逸らすというテクニックを紹介している。

この手法は「キネティック・インパクター」と呼ばれており、NASAは死滅した惑星のコアと見られる小惑星「プシュケ」に対し、2026年に実践する計画だ。

●よりエレガントな解決法

地球との衝突まで数年間ほどの時間的猶予がある場合には、

「重力トラクター」と呼ばれる手法を用いることができる。

目的の小惑星付近に
宇宙船または小型の探査機を航行させ、
機体の重力場によって
ゆるやかに小惑星の軌道を逸らす
というしくみだ。

♦︎10年以内に超接近再び

 地球への危険因子となる小惑星は、現時点で複数が判明している

2029年に地球周回軌道上のGPS衛星をかすめるほどの距離まで接近する「アポフィス」

2175年以降に2700分の1の確率で地球に落下すると予測される「ベンヌ」

これらは現在予見されているものだが、
さらには2019 OKや2020 LDのように、不意に出現するケースも無視できない。
2019 OKは、その小ささと極端に扁平した楕円軌道が災いし、発見の遅れにつながった。

ワシントン・ポスト紙は専門家のコメントとして、
この一件により、我々が知らない危険な小惑星があちこちに存在することが証明されたと述べている

別の天文学者は、
小さな小惑星を捕捉するために
地球規模の協力の枠組みを整えることが急務だと述べ、
こう訴える。

「恐竜と同じ道を我々が辿る必要はない」