令和2年度 白秋献詩

福岡県柳川市出身の「詩聖」北原白秋をしのび、

見聞きしたことを詩で表現する力を育てる「白秋献詩」の今年の選考結果が同市教育委員会から発表された。

市教委によると、小学生から大人まで全国から6444点の応募があった。

応募作には、
新型コロナで生活が一変したこの時代の様相を書き残そうとするものが多かったという。

                   文部科学大臣賞受賞作品  

「からっぽの箱」

福岡教育大学附属久留米中学校
2年 石橋 紺花子

耳慣れない言葉たちで溢れていた朝

当たり前の日常が
遠い昔話のような奇跡

目の前には空っぽの箱

夥(おびただ)しい数の弱さや嘘に守られ
築いてきた虚構は跡形もなく消えていった

心に灯る希望の中に現れた

見えない敵は

あらゆるものを停滞させ

手探りの長い闘いに向かわせる

不安を煽(あお)り 騙(だま)し  巧みな言葉で欺く

噂に振り回され
数に脅かされる

変わりゆくもの 変わらないもの

忘れてはいないだろうか

空の青 海の群青
木々の緑 夕焼けの茜
日々は彩られ輝いていたことを

降りしきる雨で荒(すさ)んだ感情を洗おう

平坦でない毎日に涙があふれても

天を仰ぎ 目を凝らし
静かに覚悟をして一歩を踏み出す

耳慣れない言葉たちが
日常となった朝

目の前には空っぽの箱

見えない希望や理想を敷き詰め
新しい軌跡を残していく

道なき道をさまよっているようで
真実の上を歩き始めた

未来はこの手でつくっていくんだ

新型コロナにより「パンデミック」「クラスター」「ソーシャルディスタンス」など、
様々なカタカナ語が飛び交っている。

だが、石橋さんはこれらの言葉を避け、「耳慣れない言葉たち」と表現。

その結果、かえって、これまでと違う未知の日常が訪れたことを、
読む者に強く感じさせることに成功している。

石橋さんは「コロナ禍で初めて聞く言葉や情報があふれる中、

だれもが感じた不安や恐怖と、今まで築いた生活様式、

文化、経済が奪われていく空虚感を

『からっぽの箱』で表現しました」と話している。

それでも、人と会いたい。
それでも、人と話したい。
それでも、人と仕事したい。
それでも、人と遊びたい。
それでも、人と笑いたい。
それでも、人と手をつなぎたい。
それでも、人とご飯を食べたい。
それでも、人とケンカしたい。
それでも、人と助け合いたい。
それでも、人と生きていきたい。

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