16年前会社の倉庫に突然”おやねこ”はやって来た。
艶やかな毛質と鋭い眼力を持った、見るからに若いめす猫だった。
やって来る時は大抵身ごもっていたが、避妊手術を受けさせたくても捕まらなかった。
ある程度子猫たちが大きくなると容赦なく置いてけぼりにした。
でも気になるのか時々子猫たちの様子を見に来たが、餌を食べるとさっさと姿を消してしまった。
そのお陰で、数匹の子猫が我が家の住人になっている。
そんな”おやねこ”も数回死にかけたことがあったが、全て自力で回復していった。
今年の猛暑もやっと終わりかけた時、力尽きたように”おやねこ”は静かに死んだ。
痩せ細った体を抱き上げて初めて”おやねこ”に触った時、まだ少しだけ温かかった。
自由気ままに生き抜いた”おやねこ”が産んだ最後の子猫は、今ここにいる。