動物を愛するということ

アニマルウェルフェア(Animal Welfare)という言葉を
聞いたことはありますか。

日本語では「動物福祉」「家畜福祉」と訳されるこの語彙

動物を畜産や愛玩などに利用するとしても、

できる限り健康で幸福な状態に置くと言う「動物福祉」の考え方が注目されています。

動物を愛するとはどういうことか?

そもそも動物と人間の関係はどうあるべきなのか?

✨アニマルウェルフェアで重要な「5つの自由」

これは、英国政府が立ち上げた委員会で、
すべての家畜に「立つ」「寝る」「向きを変える」
「身づくろいする」「手足を伸ばす」といった自由を与えることを
提唱がもとになっています。

 

「5つの自由」は家畜のみならず、
人間の飼育下にあるペットや実験動物など、
あらゆる動物のウェルフェアの基本として世界中で認められています。

・飢えや渇きからの自由
・不快からの自由
・痛み、外傷や病気からの自由
・本来の行動する自由
・恐怖や苦痛からの自由

✨日本のアニマルウェルフェアはどうなっている?

たとえば、牛はどうか。
飼育しやすいよう角を除去され、管理しやすいように始終つながれて飼育される。

そのため、運動不足や日照不足などにおちいってしまい、
関節炎や股関節脱臼を発症してしまう。
不適切な栄養状態で蹄病にかかることもあります。

豚の場合は、より悲惨と感じるかもしれない。
子豚を産むための母豚は、
「妊娠ストール(ストール)」という檻のような施設で拘束され続けるという。

母豚にかぎらず、人が扱いやすいようにという理由で、
歯や尾を切断したり、去勢されていることも知っておくべきでしょう。

養鶏を連想するとき、
大きな鶏小屋(バタリーケージ)に
ずらりと並べられた画を浮かべる人もいるだろう。

過密な状態でいまも飼育されてるため、
仲間同士が互いをつつき合わないよう、
くちばしを切断する処置が行われるというから非常にショッキングだ。

さらに、気絶させないで生きたまま熱湯で処理されたり、
短期間で出荷するために過度に太らされたりすることもあるのだという。

✨アニマルウェルフェアを無視してはいけない

人が扱いやすいという身勝手な理由で、
動物を工業的に飼育することは、倫理に反すると同時に、
人体への悪影響として跳ね返ってきます。

ストレスで健康を害することは、いまや常識だが、
それは人に限ったことではありません。

ストレスフルな環境で育てられた動物は、
抵抗力が落ち、心身の病気にかかりやすくなります。

病気を予防するため、ワクチンを接種させ、
えさなどに抗生物質を混ぜるなどして投与する。

結果、食物連鎖の常として、摂取する人間の安全性も脅かされてしまいます。

また、薬剤投与を続けると、薬剤耐性菌を発生させることにもつながります。

✨アニマルウェルフェアのメリットは?

食の安全性につながる

ストレスなく育った動物は健康です。
そのいのちをいただく私たちの体にとっても、
当然ながら健康的です。

添加物を気にしたり、
オーガニック食材を選ぶように、「アニマルウェルフェア」を選びたい。

「アニマルウェルフェア」で育てられた家畜のオリジナルマーク

畜産業への好影響

薬剤を用いた飼育は、動物にはもちろん、
飼育する人にもきっと影響を及ぼすだろう。

また、抗菌耐性菌のリスクも考えたい。
「アニマルウェルフェア」は畜産農家にもやさしい飼育方法です。

EU・オーストラリア・ニュージーランドなど

それに、本来育つべき環境で
伸び伸びと育つ姿を想像すると気持ちがいいではないか。

食の安全の観点からも、
飼育される動物の幸せという視点からも

「アニマルウェルフェア」は考慮するメリットが十分にあるとわかるでしょう。

✨世界に広がるアニマルウェルフェアの動き

倫理的な観点、そして健康のためにもいいことがある「アニマルウェルフェア」。
いま、世界中で広がりを見せています。

なかでも先進的なのは、ヨーロッパです。

1997年、欧州ではEUの憲法にあたるアムステルダム条約のなかで、
アニマルウェルフェアに関して
法的拘束力を持った議定書が盛り込まれました。

これによって
「放し飼い」「ケージフリー」
「妊娠ストール(ストール)フリー」「つなぎ飼いフリー」が進んだ。

2018年の段階で、「妊娠ストール(ストール)フリー」が
EUやオーストラリア、ニュージーランド、カナダ、米国10州で禁止、
または段階的に廃止に向かっているといいます。

北海道放牧・山口県無糖薬飼育

 

✨日本のアニマルウェルフェアの動きはどうなっている?

欧米諸国におくれを取っていたものの、

世界的な流れを受け、

アニマルウェルフェアは日本でも急速に広がり始めています。

北海道放牧牛・豚

ケージフリー宣言

多種多様な企業が「ケージフリー宣言」しており、
すでにケージフリーを実現しているところも多い。

すでに「ケージフリー」へ移行を済ませている企業の一部

・エグー(外食)
・エッグレストラン東京(外食)
・コスタビスタ沖縄ホテル&スパ(ホテル)
・こだわりや(スーパー小売)
・パパカルド(外食)など 

黒富士農場平飼い放牧

✨ともに地球に暮らす私たちが幸せに共存するためにやるべきこと

「アニマルウェルフェア」とは、

私たち人間が動物を利用するうえで、

尊重しなければいけないルールです。

いのちをいただく私たちは、

動物たちが本来生きるための行動や習性、

生態を守っていく倫理的な務めがあります。

認知度が上がってきたとはいえ、

欧米に比べると「アニマルウェルフェア」への理解度は

まだまだ差が開いている日本です。

まずは、消費者一人ひとりが、

「アニマルウェルフェア」について学ぶ姿勢を持つことが

とても大切なことです。

猫、犬、その他のペット

スイスは、すべての犬にマイクロチップを埋め込み
中央データベースへの登録が義務付けられている欧州唯一の国だ。

飼い主に課される説明責任は、犬の販売を規制する法律に定められている。

「犬の違法取引を抑制するには、犬の販売や関するすべての紙媒体・
インターネット広告で、販売者の名前と住所、
動物の出身国および血統の詳細を明記させる必要がある」(フィッツィさん)

モルモットやウサギ、インコのような社会性のある動物は、
2羽・羽以上で飼うことがスイスが法律で義務づけられている。

1匹で飼われる猫は
「毎日人と接したり他の猫が目に入るようにしなければならない」。

猫を飼う人の多くは、猫が家を自由に出入りできるように猫用窓をつけている。
アパートの外には「猫はしご」もスイスのあちこちでみられる。

猫専用の通り道は、たいてい建物のファサード(正面部分)や排水管に取り付けられ、
目のくらむような高さにも上れるようになっている。
屋内外の出入りも自由だ。

はしご自体は他の欧州諸国にも存在するが、スイスの村や町ではとりわけ多く目にする。
スイスで猫はペットとして人気なだけではなく、農家のネズミ・害獣対策として多く飼われているからだ。

世帯数の約3割が犬か猫を飼い、
その総数はすでに人間の子供の数を大きく超えていると言われる日本において、
今後、よほど住宅事情や経済状況でも変わらない限り、
新たにペットを飼いたいという人たちが増えていくとは考えられません。

罪のない動物を殺さずにすむにはどうしたらいいのでしょうか?

それにはまず「徹底して増やさないこと」です。

一説によると、需要と供給のバランスを取るためには、

犬の80%以上、猫の98パーセント以上に

不妊手術をしなければならないと言われています。

もちろん、飼育放棄や虐待など、

不妊手術だけですべてが解決するほど

問題は単純ではありませんが、

1匹の手術は確実に何百もの罪のない命を救うことに繋がります。

不妊手術は人とペットが共存するための必須条件であるとともに、

飼い主一人ひとりが実践できる最も簡単な動物愛護なのです。

人間の身勝手でどれだけ多くの命が使い捨てにされているか、

人間の保護を失った動物たちの末路がどれほど残酷であるか、

なぜ不妊手術が必要なのか、

すべての飼い主に考えていただきたい問題です。