僕たち

もっと一緒にいたかったbyだりあ

私の名前は「みつ」12歳と10ヶ月 ♀です…が
飼い主は「みつお」と呼ぶ。

私にはどちらでもかまわない。
呼ばれたようだから見てみるだけ。

数年前までは「メイ」と呼ばれていた。

たしか‥‥。

今の私は‥と言うと‥‥

まさにこの世を去ろうとしている。

もう10日以上食べてない。
食べたくないんだ。
食べても吐いちゃうんだ。

水だけが命綱かな?

いつもいる私の場所で
いろんな音を聞いてる。

飼い主の声
だりあと猫たちの鳴き声・散歩する犬の足音
落ち葉が風に舞う音・虫たちの歌声…。

今まで見ていた
飼い主やだりあ・猫たち・庭の景色を
これまで以上にゆっくり目で追っかけてる。

 

風って…こんなに気持ちよかったかな。

たくさん食べた頃のこと‥
走り回った庭のこと‥

庭のどこに何があるか 誰よりも知ってるよ。
穴もいっぱい掘ったよ。

日当たりのいいところで お腹を空に向けて
ゴロゴロくねくねするの大好きだった。

夜中に野良ねこたちが わがもの顔で庭をかっ歩してたのも。
誰にも言わなかったけど知ってるよ。

気の向くままに
家の中と外を行き来してたけど 足を拭かずに入ってごめんね。
足の裏ってくすぐったいんだよ。

もう自分では立てないんだ。
目線で合図するから。

おしっこも うんちも 家の中に入るのも
目線で合図するから。

そして


同志である“だりあ”。
私のこと大切に思ってくれて嬉しかった。

自負だけど “だりあ” を好きな気持ちは だれにも負けないと思う。
ほんとなら 私が “だりあ” を見送るはずだったのに。

ごめん……。

穏やかにゆっくり  私の一日が過ぎていく。
体はだるくて力が入らないけど
痛みはないから安心して。

私の一生
いつ終わりが来るのか 私にもわからない。

でも

大好きなみんな。
最後まで私のそばにいてよ。
淋しくないように。

何も食べたくなくなって12日目ぐらいかな。
私の嗅覚が動いた。
反射的に首が上がった(合図を送ったよ)

久しぶりの食事……ひと口だけど「おいしい」って叫んでいた。

今日はひと口 次の日は1缶
また次の日も1缶。

いい匂いがすると すぐに合図を送った。

今日も。

また嗅覚が動いた。
なつかしい臭いがゆっくり私に近づいてくる。

鼻をツンツン、前足をペロペロなめてくれた。
なつかしい匂いが体中にしみてきた。

会いたかった。嬉しかった。

今日も穏やかにゆっくり 私の1日が過ぎてゆくはずだった。

遠くの方で私の名前を呼んでる。

心臓がキュンキュンした……。

みつ ってね。

2018年4月
動物愛護センターより「メイ」♀9才をもらった。

鹿のような毛並みと耳を持ち
鹿のように繊細で臆病な犬だった。

立派なしっぽはいつも後ろ足の間に入り込み
ピンと上に立つことはなかった。

が……気づくと

毎日の散歩につられたのか ピンと立った立派なしっぽがゆらゆら揺れていた。

たくさん食べた。

いろんなところに一緒に行った。

車に乗ることが好きみたい。
いつもかるがる座席に飛び乗った。

だりあとも とても上手く付き合ってくれた。
いつのまにか だりあをまねて よく鳴くようになった。

庭にきた野良ねこちゃんを追いはらったり 
門のすきまから 散歩してる犬にちょっかいをだしたり。

明るく楽しい犬になった。

みつ…まだこれからだよ。
もっと散歩に行かなきゃ。
寝てる場合じゃないよ。

ねえ みつ。

食べなくなって12日目
猫たちのエサを持って 行ったり来たりしてたら
みつが大きく首を上げた。
ひと口だけど おいしそうに食べた。

あきらめちゃいられない。
みつの合図を見逃さないようにしなくちゃ。

ひと口から1缶 あやうい毎日が過ぎていく。
奇跡を見せてくれてるの? 
みつ。

犬のけんちゃんと数ヶ月ぶりの再開を果たす。
みつの目が忙しく動いた。
嬉しそうに見えた。

次の日、いつものように穏やかな毎日だと思っていた。
「みつ!みつ!なんかへん。いつもと違う。みつを支えた手が重い。」
小さく3回息を吐いて 最後まで優しい目で私を見ていた。

みつが消えた。

みつの匂い みつの息づかい みつの眼差しがどこにも無い。
頭では理解しているのに
淋しい…心臓が涙で溺れた。

みつ しあわせだった?
よね……。